ひょうすんぼ

宮崎の田舎町、都農町についてとその他色々

山の背くらべ

 いざ「塵添壒囊抄」を現代語に訳してみると、どこかで見覚えがあるような気がした。気になって柳田国男の著作を漁ってみると、「日本の伝説」という著作にほぼ同じエピソードが載っていた。

 「日本の伝説」日本に伝わる伝承や伝説をある程度類型化してまとめて掲載したもので1940年に発行された。おそらく「日本伝説名彙」(伝承の辞典)をすでに企図していたのであろう。青空文庫で読めるのでリンクを貼っておいた。

 柳田国男自身は「塵袋」から引用したとしているが、「塵添壒囊抄」は「塵袋」を参照して作られたものなので、両者に差異はないと思われる。

 

もとはほんとうにあったことのように思っていた人もあったのかも知れません。そうでなくとも、よその山の高いという噂をするということは、なるたけひかえるようにしていたらしいのであります。多くの昔話はそれから生れ、また時としてそれをまじないに利用する者もありました。例えば昔日向国ひゅうがのくにの人は、ようというできものの出来た時に、吐濃峯とののみねという山に向ってこういう言葉を唱えて拝んだそうであります。私は常にあなたを高いと思っていましたが、私のでき物が今ではななたよりも高くなりました。もしお腹が立つならば、早くこのできものを引っ込ませて下さいといって、毎朝一二度ずつきねのさきをそのおできに当てると、三日めには必ず治るといっておりました。これも山の神が自分より高くなろうとする者をにくんで、急いでその杵をもってたたき伏せるように、こういう珍しい呪文じゅもんを唱えたものかと思います。(塵袋七。宮崎県児湯こゆ郡都農村)

柳田國男 日本の伝説

 

"ちりぶくろ【塵袋】",

鎌倉中期の辞書。一一巻。著者不詳(釈良胤とも)。文永・弘安(一二六四〜八八)頃の成立。事物の起源六二〇条を天象・神祇などの部門別に分類し、問答体で示したもの。後に二〇一か条が「嚢鈔(あいのうしょう)」と合体して「塵添嚢抄」となった。

 日本国語大辞典, JapanKnowledge